2011年3月11日、突然襲いかかってきた東日本大震災。人間のみならず多くの生き物が犠牲になりました。行方不明になったり、一緒に避難できず飼い主と別れたままになったりした動物が数え切れないほどいることを知り、胸が痛みました。心配ばかり募るものの、私にできることといえば現場で保護活動をしている方々への寄付くらいで、あの時ほど自分の無力さを感じたことはありません。福島原発事故は人間が引き起こしたものだったので一層辛い思いがありました。
私は物心ついた頃から動物に強い関心がありました。覚えているのは、小学校にあがる前のことです。とても寒い或る朝、ダンボール箱に入れられた子猫を公園で見つけました。幸い近所の方が飼ってくださることになったのですが、もしあのまま放っておかれたらあの子は生きられなかっただろう、そう考えたら心が凍り付くように感じました。大自然の中での野生動物と違い、人間社会の中で生まれた動物たちは、人間の支えがなければ生きていけないことに気づいたのでした。以来、恵まれない状況にいる動物がとても気にかかるようになりました。動物が受ける苦しみを人間の受難以上に辛く感じてしまうのは、彼らは言葉を喋れないからでしょう。
やがて私はアート界で仕事に携わるようになり、その関係でフランスを始め欧米に滞在する機会を得ました。彼の地では、多くの場合、人間は動物の行動を過剰に規制することなく、動物と良い関係を保っているように見受けられました。飼い犬を連れたまま入れるお店は多く、ごく普通に犬用の飲み水を持ってきてくれるレストランもあり、寛容さが感じられました。動物が人間と幸せに暮らせることは、人間にとっても幸せなことだとあらためて実感したのでした。翻って日本はどうかを考えるようになったのです。
そんな矢先に起きたのが東日本大震災でした。あの時充分なことができなかったのが忘れられず、被災した動物を助けるためにもっと私にできることはないか、あらためて模索し始めました。これが、ハルモニアを設立しようと思ったきっかけです。
私は、不幸な犬や猫をゼロにすることをめざします。帰るところが見つからない犬や猫を無くしたいのです。そして、動物も人間も幸せに共生できる環境を作っていきたいと考えています。